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2 第二章 月宮
第五話 お前は私の眷属になった。
「これは隠舟といって、一時的に神の力を使えるようにするものだから。地上には何があるかわからないから、気をつけて。」 イセは二柱を激励する。「いろいろと準備していただき、ありがとうございます。無事に務めを果たしてきます」 シラスに気負いは... -
2 第二章 月宮
第四話 神器
シキの案内で三柱はイセの住む宮を訪れた。川と森が近く自然が豊かであり、丈の低い草原の中に建てられていた。イセの宮ではあるが、ミツハとミカゴもともに暮らしているとのことだった。「いらっしゃい!さあ、入って!」 三柱をミカゴが迎え、廊下を... -
2 第二章 月宮
第三話 宴の席
ヒルメに通された板張りの広間の中央に鯛に、シキはとくに悪びれることもなく答える。「ウジ様とホムラ様に関しては、異次元すぎて知恵ではどうにもならないよ」 歓迎の宴が開かれた数日後。シラスとキサイの二柱のもとにシキが訪れた。「イセが君たち... -
1 第一章 狼
第一章の登場人物
ヤマク村 ヤネリ:五歳。サマトとヨミヤの三男。サク:七歳。サマトとヨミヤの次男。ヒウチ:十歳。サマトとヨミヤの長男。ウチナリの鍛冶場を手伝っている。サマト:二十六歳。ヒウチ、サク、ヤネリの父。ウチナリの鍛冶場で働いている。ヨミヤ:二十五歳... -
2 第二章 月宮
第二話 宴の席
シキの自己紹介にシラスとキサイは居住まいを正し座礼した。「俺の役割はお前たちに託して、地上で暮らそうと思う。おもしろい生き物が生まれたらしくてな。俺は神を辞める」 クハラの話ではムスビも神を辞めて地上にいる。ホムラも地上を放浪している... -
2 第二章 月宮
第一話 世界の始まり
男は気がつくと、広々とした板の間に胡座むと、女性も微笑んだ。不意に、引き戸が引かれて男性が広間に入ってくる。「待たせたな、お前ら。何もわからないと思うから、今からざっくり説明する。楽にして聞いてくれ」 唐突に現れた男は、ゆっくりと話し... -
1 第一章 狼
第十三話 お前らはなんでこんなところにいるんだ
ミヒルとイセイは、ヤネリの案内でヤマク村へ辿り着いた。村の空気は騒然としていて、そこらじゅうで血だらけの村人が運ばれている。その行先を視線で追うと、むき出しの地面に筵が敷かれ、その上に数人の村人たちが重ねられている。どの村人も血で汚れ... -
1 第一章 狼
第十二話 あんた一体何者だ?
「タオツキ……?」 ウチナリの呟を見つけた。「……ああぁ、サク……」 ウチナリはサクに駆け寄り、座り込んで動かなくなった。オキヒはウチナリが少し落ち着くまで待ったほうがいいだろうと判断し、周囲の探索を再開する。狼の死骸を数体見つけた他には、一... -
1 第一章 狼
第十一話 その仔を返すなら、我も人の子を見逃そう
「その子のそばから離れなさい!」 オオシがヤネリに牙を突き立てようとしているところに、敵意のこもった警告が届く。その声に抗うことがなぜか躊躇りつき、悲鳴を上げた。 「……ミヒル様……」 イセイは悲しんでいる仔狼を痛ましそうに眺める。責められて... -
1 第一章 狼
第十話 返り血を浴びた顔には、薄笑いが貼り付いていた。
狼から幼いナギを助け出したオキヒは、ヤマク村に着くと狼に囲まれた。村では狼の群れに襲われた村人たちが逃げ惑い、騒然として収拾がつきそうになかった。ナギや、ナギに託されたやっちゃんやさっちゃんという人物について尋ねるどころではなさそうだ...